「車を売るなら3月が高いらしい」
「決算期まで待ったほうがいいのかな?」
インターネット上には、このような情報が溢れています。
確かに、日本の新生活シーズンや自動車業界の決算期に合わせて、1月〜3月は需要が高まる時期です。
しかし、現役の車屋社長として言わせていただくと、この情報は「正解であり、不正解」です。
なぜなら、日本の中古車相場は、今や国内の需要だけで決まっているわけではないからです。
実は、車種によっては「何月に売るか」よりも「登録から何ヶ月経過したか」のほうが、査定額に100万円以上の差を生むことがあります。
この記事では、プロしか知らない「輸出相場のカラクリ」と、本当の売り時について暴露します。
一般的に言われる「高く売れる時期」の正体
まずは基本のおさらいです。国内需要ベースで見た場合、車が高く売れやすい時期は年に2回あります。
1月〜3月(年間最大)
4月からの新生活(就職、進学、転勤)に向けて、中古車の需要が最も高まる時期です。
販売店も在庫を確保しようと必死になるため、買取相場が上がります。
また、3月末までに名義変更をすれば翌年度の自動車税がかからないため、駆け込み需要も発生します。
9月〜10月(半期決算)
夏のボーナス商戦や、企業の中間決算に合わせた時期です。
3月ほどではありませんが、相場が動きやすいタイミングと言えます。
ここまでは、誰でも知っている常識です。
しかし、アルファード、ランドクルーザー、ハリアー、ハイエースなどに乗っている方は、これだけを信じてはいけません。
プロが見ている裏指標「輸出規制」のタイミング
日本の中古車は、その品質の高さから世界中で大人気です。
マレーシア、ケニア、ロシア、パキスタン、UAE…。
実は、多くの中古車が高値で海外へドナドナされていきます。
しかし、各国の法律には「輸入規制」というものがあります。
「製造から〇年以内の車しか輸入してはいけない」「登録から〇ヶ月経っていないとダメ」といったルールです。
このルールが解禁されるタイミングこそが、相場が爆発的に跳ね上がる瞬間なのです。
事例①:マレーシアの「13ヶ月〜5年ルール」
高級ミニバンやSUVの輸出先として有名なマレーシアには、基本的に「新車登録から12ヶ月未満の車は輸入できない」という規制があります。
そのため、登録から12ヶ月目までは国内相場でしか売れません。
しかし、13ヶ月目に突入した瞬間、マレーシアのバイヤーが入札に参加してくるため、一気に相場が跳ね上がることがあります。
逆に、製造から5年を過ぎると規制にかかり、輸出できなくなります。
「5年落ちになる前(59ヶ月目まで)」に売らないと、一日過ぎただけで査定額が半分になるという恐ろしい事態も起こり得ます。
事例②:パキスタンの「経過年数ルール」
パキスタン向けに人気のある軽自動車やコンパクトカーの場合、製造年からの経過年数によって関税が大きく変わります。
特定の月をまたぐだけで、現地の販売価格が変わるため、日本の買取相場も連動してガクンと下がることがあります。
「モデルチェンジ」の情報は命取りになる
時期の話でもう一つ重要なのが、「フルモデルチェンジ」と「マイナーチェンジ」です。
新型車が発表・発売されると、旧型車に乗っていたユーザーが一斉に乗り換えを行います。
市場に旧型車が溢れかえり、供給過多になって相場が暴落します。
- フルモデルチェンジ: 相場が激変します。噂が出た段階で売り抜けるのが賢明です。
- マイナーチェンジ: 外装(ライトやグリル)が変わるだけでも、前期型の価値は下がります。
車屋はメーカーからの情報をいち早くキャッチしていますが、一般の方はニュースになってから知ることが多いです。
「新型が出るらしい」という噂を聞いたら、一日でも早く売却に動くのが鉄則です。
結論:最強の売り時は「思い立った今日」である
ここまで「時期」や「輸出」の話をしましたが、これらを一般の方が完全に把握してコントロールするのは不可能です。
輸出の規制や関税ルールは、現地の政治情勢によってコロコロ変わるからです。
「来月になれば高くなるかも?」と待っている間に、為替が円高に振れたり、規制が変わったりして、数十万円損をするリスクのほうが高いのが現実です。
車という資産は、基本的には「一日古くなるごとに価値が下がる」ものです。
今日より若い車はありません。
「売りたい」と思ったその日が、あなたの車が一番高く売れる日である可能性が高いです。
カレンダーとにらめっこする前に、まずは「今のリアルな相場」を一括査定で確認してみてください。
もしその車が「輸出解禁のタイミング」にハマっていれば、驚くような金額が提示されるはずです。
