「昔、少しぶつけたことがあるけど、言わなきゃバレないかな?」
「事故車扱いになると安くなるから、黙っておこう」
愛車を少しでも高く売りたい気持ち、痛いほど分かります。
しかし、現役の車買取業者として、これだけは断言させてください。
その嘘、100%バレます。そして、絶対に損をします。
この記事では、なぜプロの査定士には嘘が通用しないのか、そして嘘をついて売却した後に待ち受けている「法的なトラブル」について解説します。
一時の欲で嘘をつくことが、どれほどリスクの高い行為かを知ってください。
プロはここを見ている!修復歴を見抜くポイント
私たちプロの査定士は、車をパッと見ただけで「違和感」を感じ取ります。
そして、具体的なチェックポイントを見て、確信に変わります。
あなたがどれだけ綺麗に洗車しても、コンパウンドで磨いても、以下の痕跡は消せません。
1. ネジ(ボルト)の塗装剥げ・回し傷
車のドアやボンネット、フェンダーなどのパーツは、ボルトで固定されています。
新車の時のボルトは、ボディと同じ色で綺麗に塗装されています。
しかし、修理のために一度でも工具をかけて回すと、ボルトの角の塗装が剥げたり、位置が微妙にズレたりします。
私たちはボンネットを開けた瞬間、まずこのボルトを見ます。「あ、回してるな(交換してるな)」と3秒で分かります。
2. シーリング(コーキング)の形状
ドアやボンネットの縁には、錆止めや防水のための「シーリング剤」が塗られています。
新車時は機械(ロボット)が塗るため、均一で硬さも一定です。
しかし、板金修理でドアを交換したり修理したりした場合、人間が手作業でシーリングを塗り直します。
プロが爪で押したり形状を見れば、「これは後から塗ったものだ」と一発で分かります。
3. 塗装の肌(ゆず肌)の違い
再塗装された車は、光の反射具合や表面の凸凹(ゆず肌)が、オリジナルの塗装とは微妙に異なります。
特定の角度から光を当てると、修理した箇所だけ色が違って見えたり、波打って見えたりします。
嘘をついて売った後の「恐怖のシナリオ」
「査定の時にバレなければ勝ち」と思っていませんか?
それは大きな間違いです。本当の地獄は、契約書にサインをして、お金を受け取った後にやってきます。
瑕疵担保責任(現在は契約不適合責任)
2020年の民法改正により、売主の責任はより厳格な「契約不適合責任」となりました。
簡単に言うと、「契約の時に聞いていない不具合(修復歴や故障)があった場合、売主はその責任を取らなければならない」という法律です。
もしあなたが修復歴を隠して売却し、後日、業者がオークション会場の検査などでそれを発見した場合、業者はあなたに対して以下の請求ができます。
- 契約の解除(車を返すから金を返せ)
- 損害賠償請求(修復歴による減額分の返金)
「高く売れて焼肉に行っちゃったから、もうお金ないよ!」と言っても通用しません。
内容証明郵便が届き、最悪の場合は裁判沙汰になります。
最初から正直に話していれば引かれたであろう金額(例えば10万円)よりも、さらに高額な賠償金や手間が発生することになります。
「傷や凹み」は直してから売るべき?
修復歴だけでなく、ボディの擦り傷や凹みについてもよく質問されます。
「修理してから査定に出したほうが、査定額が上がりますか?」
答えは「No(絶対に直さず、そのまま出せ)」です。
例えば、バンパーに擦り傷があるとします。
一般の方が板金工場で直すと、3万円〜5万円かかるとしましょう。
しかし、その傷を直したところで、査定額は3万円もアップしません。せいぜい1万円プラスになるかどうかです。
なぜなら、買取業者は自社工場や提携工場で、原価(安価)で修理できるからです。
あなたが高い工賃を払って直しても、その分を回収できることはまずありません。
「傷があるから…」と引け目に感じず、そのままの状態で見せるのが、経済的に一番賢い選択です。
結論:正直者が一番「得」をする
車の査定において、駆け引きや嘘は不要です。
むしろ、リスクしかありません。
「実はここに修復歴があります」
「後ろのバンパーをぶつけています」
最初にすべて申告してくれるお客様に対して、査定士は「信頼できる人だ」と安心します。
「後からトラブルになるリスクがない車」だと分かれば、業者はリスクマージンを取る必要がなくなり、限界ギリギリの査定額を提示しやすくなります。
隠せば減額リスク、話せば信頼アップ。
どちらが得かは明白です。
堂々と胸を張って、ありのままの愛車を査定に出してください。
