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なぜ「ディーラー下取り」は安いのか?営業マンが決して言わない「査定額のカラクリ」

新車に乗り換える際、今の車をそのままディーラーに下取りに出そうとしていませんか?
「納車まで乗っていられるし、手続きも楽だから」

その「楽さ」の代償として、あなたは20万円〜50万円、車種によっては100万円以上の「手数料」を払っているのと同じだとしたら、どうしますか?

元車屋社長として断言しますが、ディーラーの下取り価格が、買取専門店の査定額(直販・輸出価格)に勝つことは、構造上あり得ません。
なぜここまで金額に差が出るのか? その「業界の裏事情」を暴露します。

目次

理由1:見ている「教科書」が根本的に違う

そもそも、ディーラーと買取店では、査定に使う「基準」が全く異なります。

ディーラーは「イエローブック(減点方式)」

ディーラーの査定は、「イエローブック(またはレッドブック)」と呼ばれる、業界団体が発行する「中古車価格ガイドブック」に基づいています。
これは「新車から〇年経ったから基本価格は〇〇円」という、減価償却的な考え方です。

そこから「傷があるからマイナス」「距離が多いからマイナス」と、ひたすら減点していきます。
ここには「今、ロシアでこの車が人気沸騰している」といった市場のライブ感(プレミア価値)は一切反映されません。

買取店は「オートオークション(加点方式)」

一方で、我々買取店が見ているのは、リアルタイムの「業者オークション相場」です。
「昨日、同型車がマレーシアバイヤーの競り合いで150万で落札された」という事実があれば、それを基準に査定します。

  • 「サンルーフが付いているから+20万」
  • 「限定グレードだから+30万」

このように、市場価値を加点していくため、マニュアル査定のディーラーとはスタート地点から勝負にならないのです。

理由2:「下取り対策費(値引き)」の数字マジック

これが最も悪質な、しかし日常的に行われている営業テクニックです。
ディーラーで新車の見積もりを取った時、こんなことを言われませんでしたか?

「今回、下取り車を頑張って入れていただけるなら、新車の値引きをさらに10万円上乗せします!」

これを聞くと、多くのお客さんは「得した!」と思ってハンコを押してしまいます。
しかし、これは完全な数字のマジックです。

【裏側のカラクリ】

  • 本来の買取相場: 100万円
  • ディーラーの最初の下取り提示: 60万円(わざと安く出す)
  • 「頑張った」後の提示: 下取り60万 + 値引き20万 = 実質80万円

分かりますか?
営業マンは、本来100万円の価値がある車を60万円と低く見積もり、浮いた40万円の中から「20万円の値引き」を演出しているだけなのです。
あなたは得をするどころか、まだ20万円損をしています。

この「下取りと値引きを混ぜて、総支払額で調整する」のがディーラーの常套手段です。
このマジックに騙されない唯一の方法は、「下取りなしの値引き額」と「買取店の査定額」を別々に比較することです。

ディーラー下取りの「唯一のメリット」とは?

ここまでボロクソに言いましたが、ディーラー下取りにも一つだけ強力なメリットがあります。
それは「新車の納車日まで、今の車に乗り続けられる」ことです。

買取店の場合、相場が変動するため「契約後、1週間〜2週間以内に引き渡してください」と言われるのが一般的です。
新車の納期が半年先の場合、その間の「足」がなくなってしまいます(代車を貸してくれる買取店もありますが、長期間は稀です)。

一方ディーラーなら、納車当日まで乗っていき、店で乗り換えて帰ることができます。
この「代車の手配や引き渡しの調整の手間賃」として、数万円〜10万円安くなるなら許容範囲かもしれません。

しかし、その差額が30万、50万となれば話は別です。
そのお金があれば、レンタカーを借りてもお釣りが来ますし、新車のグレードを一つ上げられます。

結論:「買う」と「売る」は完全に切り離せ

賢い消費者が実践している、最も損をしない車の買い替えフローは以下の通りです。

  1. ディーラーで新車の商談をする際、「下取りは友人に譲るかもしれないので、ナシで見積もりをください」と伝える。
  2. 新車の値引き交渉を限界までやる。
  3. 契約を待ってもらい、その足で「一括査定」に申し込み、買取店を呼ぶ。
  4. 買取店に「〇月〇日(新車の納車近く)まで乗りたい」と条件を伝え、その条件で一番高い金額を出した業者に売る。

最近の買取店は、ディーラー下取りに対抗するため、「引渡し時期の相談」にも柔軟に乗ってくれます。
「納車まで2ヶ月あるけど、今の相場で契約して、引き渡しは2ヶ月後」という契約を結んでくれる業者も増えています。

「面倒くさいから全部ディーラーで」
その思考停止が、一番の損失です。
まずは自分の車の「本当の価値(買取相場)」を知ってください。ディーラーの提示額がいかに安いか、愕然とするはずです。

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