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「やっぱり売るのをやめたい」は通用する? 契約キャンセルと違約金の法的真実

「契約書にサインした直後に、家族から猛反対された」 「翌日に他社から10万円高い査定が出た」

このような理由で契約解除(キャンセル)を申し出ると、業者から「キャンセル料として一律10万円払え」「違約金が発生する」と脅されるケースがあります。 これは、消費者の無知につけ込んだ脅迫まがいの行為である可能性が高いです。

法的な観点と実務的な観点から、「契約後のキャンセル」の真実を解説します。

目次

消費者契約法が守る「不当な賠償請求」の無効化

まず、法律の話をしましょう。消費者契約法第9条第1号では、契約解除に伴う損害賠償額の予定(キャンセル料)について、以下のように定めています。

「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は、無効とする」

つまり、業者があなたに請求できるのは、「実際に発生した実費(損害)」だけです。 まだ車を引き渡していない段階であれば、業者の損害はせいぜい「人件費」や「印紙代」程度。数千円の話です。 それにも関わらず、根拠なく「一律10万円」や「査定額の10%」を請求する条項は、この法律に照らし合わせれば無効になる公算が極めて高いのです。

「車を引き渡したか否か」が運命の分かれ道

キャンセルが可能かどうかの最大の境界線は、**「車両と書類を業者に引き渡したかどうか」**です。

1. 引き渡し前(契約書サインのみ)

この段階であれば、強気でキャンセルを申し出てください。 「まだ車は手元にあります。実費が発生しているなら明細を出してください。払いますが、根拠のない違約金は消費者センターに相談します」 こう伝えれば、まともな業者はトラブルを避けて手を引きます。裁判をしてまで車を奪うメリットがないからです。

2. 引き渡し後(車両が業者の手に渡った後)

車を持っていかれた後は、状況が一変します。 業者はすぐにオークション会場へ車を搬入し、出品手続きを行います。ここまで進むと、陸送費、出品料、取り下げ手数料など、明確な実費が数万円単位で発生します。 さらに、次の買い手が決まってしまっている場合(転売契約完了後)は、法的にキャンセルが認められないケースがほとんどです。

「クーリング・オフ」は車買取には適用されない

ここで一つ注意点です。訪問販売などで適用される「クーリング・オフ制度」ですが、自動車の売却契約には適用されません(特定商取引法の適用除外)。 「8日以内なら無条件解約できる」という知識は、車買取においては通用しないのです。

だからこそ、契約書にハンコを押すときは「後戻りはできない」という覚悟が必要です。しかし、それは「不当な搾取に屈する」という意味ではありません。 もし理不尽な高額請求をされたら、即座に支払わず、地域の消費者生活センター(188番)に電話してください。その行動自体が、悪質業者への最強の牽制球となります。

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