「昔、駐車場でポールにぶつけてバンパーを交換したんです。やっぱり事故車扱いですよね…?」 査定の現場で、申し訳なさそうにこう告白するお客様が後を絶ちません。
はっきり言います。それはとんだ勘違いであり、無知につけ込む営業マンの格好の餌食です。 一般の方がイメージする「事故車」と、我々プロが扱う「修復歴車(事故車)」の定義には、天と地ほどの乖離があります。この境界線を知らなければ、あなたは数十万円単位の損をすることになります。
「修復歴あり」になるのは「骨格」のみ
中古車査定の基準を定めたJAAI(日本自動車査定協会)や、オートオークションの規程において、「修復歴あり(R点)」と認定されるのは、車の**「骨格(フレーム)」**に損傷が及び、それを修理・交換した場合のみです。
具体的には以下の部位です。
- フレーム(サイドメンバー)
- クロスメンバー
- インサイドパネル
- ピラー(柱)
- ルーフパネル
- フロア(床)
- トランクフロア
これらは車の「背骨」にあたる部分です。ここが歪むと走行安全性に影響が出るため、厳格に「事故車」として扱われ、査定額は大幅に(場合によっては30〜50%)ダウンします。
外板パネルは何枚交換しても「修復歴なし」
一方で、以下のパーツは**「外板パネル」と呼ばれ、たとえ激しく破損して新品に交換していたとしても、「修復歴なし」**と判断されます。
- フロントバンパー / リアバンパー
- ボンネット
- フロントフェンダー
- ドア(スライドドア含む)
- トランクの蓋(リアゲート)
これらはネジ止めされているだけの「服」のようなものです。服を着替えても人間の中身が変わらないのと同様、外板を交換しても車の骨格には影響がないため、事故車にはなりません。 もちろん、「交換跡がある」として多少の減点はされますが、事故車扱いの減額幅とは雲泥の差があります。
営業マンの「トークの罠」を見抜け
悪質な営業マンは、この定義の違いをわざと混同させます。 「あー、ドア交換されてますね。これだと『事故歴』がついちゃうんで、相場より30万は下がりますよ」
これは真っ赤な嘘です。「修理歴」や「交換歴」はあっても、「修復歴(事故歴)」ではありません。 この嘘を見抜くために、査定時には以下のスタンスを貫いてください。
- 「ぶつけた」事実は隠さない 嘘をついてもプロが見れば塗装の肌感やボルトの回し傷で一発でバレます。隠すと心証が悪くなります。
- 「骨格には届いていない」と主張する 「バンパーとフェンダーはやりましたが、インサイドパネルやフレームまでは行っていません。ただの板金修理です」と専門用語を交えて伝えてください。
相手が「こいつは素人じゃない」と認識すれば、不当な買い叩きは止まります。知識こそが、あなたの資産を守る最大の武器です。
